どこまで行こう
風に乗って
野原を越えて
小学校の合唱を思い出した。
残念ながら、それは、気球にのって。
5月中旬、突然、気胸になった。
自然気胸で、左肺の上部に穴があき、空気が漏れて肺がしぼんでいた。
色々な事が起こる。
これも家族の記録として、記しておこう。
ある月曜日の夕方、仕事場で、恐らくだが、両腕を上に、「はぁーあ、」と、伸びをした時だと思う。
左の背中に肩こりや筋違いの強いやつというレベルの痛みが刺さり、胸が、息が苦しくなった。
以前にも何度か、左の背中が肩こりのように痛くなり、「うっ」となったことはあったが、すぐに収まっていた。
しかし今回は終業時間までの約40分、痛みが収まらないどころか、息苦しくていつも通りに歩けない。
心筋梗塞かな?
こりゃヤバいやつかも?
少しビビりながら、翌日はテレワークにすると宣言して、早々に帰宅。
帰りの車で色々考えたが、とりあえず家に到着し、救急へ行こうと。
伊達市の夜間救急外来に電話して症状を話すと「循環器科は先生が居ないので室蘭の病院に行ってください」
Oh No
さっきまで居たよ室蘭に。
念の為最低限の着替えお泊まりセットを持って病院を目指す。
今回は高速に乗って行こう。
室蘭へトンボ帰り。
胸の苦しさは変わらない。
19時。初めて訪れる病院に到着し、とりあえず車を正面玄関近くの有料提携駐車場に停めて病院へ。
救急の受付はどこだ?
ちょうど勤務交代で帰るらしい看護師さん二人に出くわし、道を聞いた。
斜面に建つ病院らしく、今いるところが2階、受付は1階との事、案内して貰うが、息切れして歩くスピードについていけない。
まずい。これはなんかマズイ。
そう思いながら何とか受付へ。
問診票を渡され、熱を計って待てと。
背中が痛い、胸が苦しい、息がすぐ上がるなどの症状を全て書いて、体温計を見ると、37.8
えぇー?
こりゃ違う意味でマズイぜ。
「何度でしたー?」
看護師の顔色が一瞬で変わるのが分かる。
こちらに入ってください。
透明のビニールカーテンで囲まれたベット、防護服の看護師、異常にでかい空気清浄機。
こりゃ相当マズイっぺ。
「抗体検査をしますね」
鼻の奥に綿棒を突っ込まれ、しばらく待つ間、急激に家族のことが心配になってきて、心身ともに苦しくなる。
「マイナスです」
防護服をおもむろに脱ぎ捨てる、という事は陰性だ。
助かった、でも苦しさは変わらない。
心電図の電極はずっとついており、立て続けにレントゲン、エコー。
あどけない研修医に、それとほぼ歳が変わらないくらいの若い先輩医師が
「このボタン押して、ここに当てるの」
「グリスもっとつけて」
オイオイ、急患でやるなよ。
初めての練習台にしてんじゃねーよ。
と思いながらも、これも彼の経験と、何も言わずに受けていた。
二人は奥の部屋で作戦会議をしているようで、先輩医師があーだこうだ、しばらくして研修医だけが戻ってきた。
おぅ、お伝えする練習ね、いいだろう。
「循環器系に特に異常はありません、血液検査の結果、筋肉痛などの時に上がる数値が少し高いので、背中の痛みはそれかと。鎮痛剤出しておきますので帰っていいですよ」
ほぅ。
「心筋梗塞などの可能性は無いんですね」
「そうです」
「背中の痛みは、筋の痛みかも知れない、じゃあなぜこんなにも息が苦しいんでしょうか」
と言うと彼は、黙ってしまい、一度、先輩の所へ戻ろうとして留まり、少し考えてから、私の胸の上あたりを指でトントン。
左胸、若干痛い。響く。
右胸、痛み無し。響かない。
家の壁のボードと柱を区別するような響き。
ちょっと待て、自分でもやらせろ、あ、ほんとだ。
「これはさ、なんか左右で違うよね」
「・・・お待ちください」
しばらくして研修医が戻り、
「気胸の疑いがあるので、CT撮らせてください」
初めてのCT。
「胸を撮るので両手をバンザイしてください」
これが辛い、めちゃくちゃ背中と胸が痛い。
救急の処置室に戻り、「呼吸器の先生を呼んでますので」と、しばらく待たされた。
15分後くらいで、中東系の外国人の先生が現れ、CTの写真を見ながら「気胸です。肺の上部にブラ(肺胞、チューインガムの風船のような)があり破裂して空気が漏れたため、肺がしぼんでいる」
研修医くん、君の胸トントンが無かったらどうなっていたよ。
ていうかあれだけ機械的な検査しといて、そういや1度も聴診器もあてなかったな、ヤツら。
よく考えると循環器系の疑いで診断するのに聴診器を使わない事に気がつくべきだった。
今までの経験上、胸トントン、腹トントンも必ず循環器科では、やるはずだ。
やらないのはコロナのせいなのか?
わからない。
医者の言葉は鵜呑みにしてはいけない。
この時点で22時。
先生は
「ですが、緊急手術まで必要な状態では無いが、手術はした方が良い。このまま入院してもらうか、一度帰って準備してから入院でもいい。ただし、左の肺が心臓を圧迫する可能性がないわけでないので、帰っても油断出来ず、異常があればすぐに病院に行くこと」
難しい判断だが、妻と相談し、大事をとってこのまま入院することに。
かくして、
急転直下で
気胸になって
入院することに。
入院・手術・退院までは
次に記そう。