15年前。
函館に住んでいたとき、友人に教えてもらった小さなピザやさんが忘れられない。
おいしい、と言うよりおもしろいピザやだった。
名前は忘れてしまった。
でもあの店主は忘れられない。
小さな店内は入り口にレジがあり、店内とキッチンが壁で仕切られておらず、ピザを作る店主の調理が一通り見える。釜ではなくオーブンだったと思うが焼いている行程もよく見える。
年期の入ったクラシックな薄暗い店内には、静かにアヴェマリアが流れていた。
注文はピザの大きさとトッピングを選ぶシステムで、店主がひとりで切り盛りしていた。店主は「コックさん」という出で立ちで白い背の高いコック帽(トックというのかな)を被る小柄なおじさんだ。
初めて訪れたとき、注文をして焼き上がるのを待っていると「見ててよ」友人が言う。
ピザをオーブンに入れて焼き上がりを見計らっている店主。
「20秒」「10秒前」
なにやらブツブツとカウントダウンをつぶやいている。
「アン、ドゥ、トゥロワッ!!」
!!?
「こぉれがピザだっ!」
と勢いよくオーブンからビザを取りだし、席へ運んでくれた!
コミカルな店主に驚きを隠せないが、ピザは美味しそうだ。もう一つ焼き上がる前にいただこう。
キノコとアンチョビ。シンプルで家庭的な味だったと思うがそれ以上に店主が気になって仕方ない、目が離せない。
他の客のビザも焼き上がる。
来るぞ!
「10秒前」
「加トちゃん・・志村!・・こぉれがピザだっ!」
おぉ!バリエーション!
でも何でドリフ?!
アヴェマリアが流れている店内には、次々と焼かれるピザの良い匂いと、笑いを堪える不思議な空気が漂う。
「こぉれがピザだっ!」の前にはいろいろなセリフがあるようだ。「アヴェマリアっ!」
だったりする。
もう一つのビザはピーマンとサラミだったと思うが楽しくいただくことが出来た。
お会計。
どう来るのかな?
「はい、おつり40万円!ありがとうございました!」
そこはそうなのね。
もう閉店してしまったが、忘れられないピザの思い出。
あのピザおもしろかったな。
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